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2022年4月道コン国語レビュー
更新日:2022年4月8日

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中3 大問1(漢字)
簡単すぎるということもなく、難しすぎるということもなく、適度な問題ばかりだと思います。
「赴く」が最も難しいんじゃないかな、と予想。
中3 大問2(対話・資料)
問1
国語というより、英語のリスニングの第2問で出そうな問題でちょっと新鮮でした。
難しくはないですが、こういう「長文読解以前のベーシックな読解」を聞く問題は今後増えそうですね。
問2
(1)は伝統的な「主語と述語の対応」の問題ですが、(2)がなかなか新鮮。
広い意味では「敬語の問題」ということなのでしょうが、「言い方がきついからやわらかく全体を言い換える」という、言語学で言うところの「ポライトネス」に関わる出題。
条件2だけだとただの敬語の問題ですから、条件1ですね。ユニークさを生み出しているのは。
わたしの日本語教師の師匠が見たらすごく喜びそう。
ただ、中学国語の範囲上「ご遠慮ください」「お控えください」のような表現って既習なんですかね? 教科書でちゃんと書かれていて、学校でも指導されているならまったく問題ないと思うのですが。
(教科書見て自分で調べればいいんですが、ちょっとそこまでやってる時間がなく……)
(3)は最もオーソドックスな、「条件に違反しないこと」さえしっかり守れれば点になる、北海道の高校入試らしい問題です。
こういうのを確実に満点取っていけば公立入試はどうにかなります。
(2)を是とするか非とするかは意見分かれそうですが、全体で見ればユニークな問題と、ごくオーソドックスな問題がバランス良く配置されて、よく練られた問題だな、とは思います。
中3 大問3(小説)
出典:須賀しのぶ「夏の祈りは」
部活を舞台にした青少年の成長、というごくベタな設定の問題で「またこのパターンか」と食傷ぎみなのは否定できませんが……
ちょっと珍しいのは「甲子園に出られる」高いレベルのチームで、しかも主人公がいるチームのほうが強いというところでしょうか。
弱いほうが強いほうに挑んでいくほうがありがちなので。
また、普通だったら「支倉」のほうが主人公っぽいキャラなのに、あえてその逆の「始」が主人公なのも面白い設定だな、と思います。
問1
最近出題率の高い「答えが後ろに来るタイプの指示語」問題です。
「指示語は答えが前にある」という法則性だけで、意味を理解せずに答えた人をヒッカケられる、なかなかの良問です。
問2
以前のセンター試験小説で出ていたような、語句の意味をストレートに問う問題。
このタイプは「文脈で考えれば正解になりそうだが、その語句の意味ではない選択肢」を使ってヒッカケようとしてきます。
今回で言えばイの選択肢がそれですね。
問3
(1)設問の要求が曖昧すぎて、何を答えていいのか戸惑う問題ですし、正直問題の設定に無理があると思います。
傍線部は「支倉と始の対比」を意味しているので、「支倉」の記述をまずはつかむ必要がある。
すると「スタメンになれない」という情報があるので、ここに注目すれば答えは模範解答どおり「自分のプレーでチームを引っ張る」という内容が正解になるでしょう。
ただ、「支倉」の記述にはそれに加えて「健気に皆を支える」という内容も示されています。「健気に皆を支える」支倉の様子として、本文中に「皆をよく見て、盛り上げるのがうまい」という記述があるので、ここの逆をとって「無口で表情が少なく、盛り上げ下手なキャプテン」という内容を書いてもおかしくないですよね。採点基準上、このポイントは全く指摘されていないので、「無口で表情豊かではない」のような解答を書いた生徒はおそらく✕にされていると思うのですが、それは適切な採点ではないとわたしは考えます。
(完全にマルにすべきかと言えば、それも違いますが)
本来この問題を出すなら、字数制限を10字程度ではなく20~30字を取って、「始」の長所と短所を両方まとめさせる出題にしないといけなかったのだと思います。
(2)「決勝打」を✕にする根拠はあるのでしょうか。まぁ「ここぞというときの」という表現がそのまま21行目にあるので、「集中力」を要求しているのは見え見えなのですが。(1)もそうですし、後の古文でも同じ問題が出てきますが、今回の中3道コンは「こっちでも答えとしてアリなんじゃないの?」というケースが頻発していて、誤答可能性の検討がちょっと甘すぎるように思います。
(3)
これも「誰よりもいいプレーをした」を減点にして、「全力で試合に臨んだ」だけをマルにする根拠はどこにあるのでしょう。
おそらく出題者の意図としては、問題文に「行動」を答えよと書いてあるので、「いいプレーをした」のは行動の「結果」であって、行動そのものではないと言いたいのでしょうけど……
わからなくはないですが、「誰よりいいプレーをした」を認めない根拠としてはちょっと弱すぎると思います。「誰よりいいプレーをした」ことも行動と言えば行動と言えますし。
ちょっと問3が、無理やり「図表」っぽくまとめさせる問題にしようとしすぎて、問題として無理のあるものになってしまったのかな、という印象です。
中3 大問4(説明文)
出典:堀部安嗣「住まいの基本を考える」
今年の公立高校入試で「評論を出さない」という事件というか暴挙が起こったわけですが、今回の道コンは従来どおりの構成で評論も出題されています。
8月、どうなりますかね。
入試を踏襲して評論を外してくるのか、こないのか。
難しい判断を迫られると思います。
1段落はごくオーソドックスな対比構造(動物vs人間)と、テーマ提示(建築とは)ですが、2段落以降のたとえ話から話がつかみにくくなります。
18~19行目の「では」以降まで本題が出てこないので、18行目で「建築」の話に戻ってきたときに集中度を上げて読めればよかったですね。
問1
品詞は文法の中でも最も基本と言えますし、出題率も高いので、見抜けない品詞が一つでもあるなら勉強し直すべきです。
問2
①、良い問題だと思います。
傍線部1がある段落が、全体として「壁にぶつかった人」の話をしているので、同じく「壁にぶつかった人」の話をしている2段落に答えがあると判断する必要があるわけです。これを満点取れるとすごくいいですね。
②も普通ですが、空欄直前の記述が長く、かなり誘導的なので①に比べるとさほど頭を使わずに解けてしまうように思います。
難易度は上がってしまいますが、変に空欄を作らず、シンプルにまとめて70~80字で記述させたいですけどね。当塾でもしテキストとしてこの文章を使うとしたら。
中3 大問5(古文)
出典:兼好法師「徒然草」
全訳は道コンの解説に掲載されていますので、そちらをご参照ください。
(読解上のポイントになる箇所)
・1行目「とく=早く」は今回は注釈がついているが、一応覚えておいたほうがいい単語
・1~2行目で「人」が言ったことと、「頓阿」が言ったことが対立していること、筆者が「頓阿」の意見に賛同していることを理解する。今回は、評論・説明文の読み方に近い内容。3~4行目でも、一般的な意見と「弘融僧都」の意見を対立させ、「弘融僧都」の意見に賛成している。
・しかも、「頓阿」の意見と「弘融僧都」の意見は似通っていて、ここに類比構造を見ることもできる。まさしく評論・説明文読解のド定番パターン。古文は「物語」的な文章も多いですが、最近はこういう評論チックな展開の文章が増えてきている気もします。
・2行目「申し侍りし」を訳せるようになりたい。「侍り=丁寧語=です・ます」「~し=過去」なので、「申しました」となる。
・3行目「おなじやうにもあらぬ」の「ぬ」に注意。「ぬ」は「~ない」と訳す場合と「~した」と訳す場合の2通りがあり、今回は前者。(見分け方は授業でやります)
・4行目「~ととのへん」の「ん」は要注意。現代語では「整えん」と言うと「整えない」という意味になるが、古文では「整えよう」という意味で訳す。「ん」の意味を知らないと全く逆に訳してしまいがちなので、必ず理解しておきたい知識。
・4行目「不具なるこそよけれ」は係り結び「こそ」があるので、係り結びをなくしてしまえば「不具なる(事)、良し」となる。
・6行目「ことのととのほりたるはあしき」は「事の整ほりたるは悪しき」。ひらがなで、漢字に直せそうなところは自分で漢字に直してみる姿勢が大事。
・最終行「先賢のつくれる」の「つくれる」は「can make」ではない。こぶんで「エ段+る」の形は「~した、している」と訳すので、覚えておきたい。「昔の賢人が作った」と訳す。
このぐらいの知識があると、高校入試であれば十分なレベルで解釈できるかと思います。
物議をかもすとしたら、問3でしょう。
これは出題として問題がある、少なくとも議論の対象にはなるべきではないかと思います。
「し残したるを、さてうち置きたる」ものの例が「2つ」本文中にあげられている、と問題文にありますが、本文中に出てくる「未完成・不完全な状態のままで放置されたもの」の例はざっと5つあります。
A うすものの表紙(羅)
B 螺鈿の軸
C 一部と有る草子など
D 内裏
E 先賢のつくれる内外の文
このうち、正解とされるのがDとEです。
Dが正しく、Bが答えにならないのは字数制限からも明らかですが、ACが✕で、Eだけをマルと認めるのはどのようなロジックのもとで成立するのでしょうか。
パッと考えつくのは「し残したる=やり残したところがある」という意味を根拠に、作者が「意図的に」未完成のまま放置したものが答えになると捉える考え方でしょう。
その立場に立つと、Aは経年劣化でボロボロになっただけで、意図的に未完成にしたわけではないので不適ということになります。
Cも、意図的にわざと「体裁を不揃いにした」のかというとかなり疑問ですよね。意図せず結果的にそうなってしまった、というだけでしょう。
この考え方に立てば、Eはマルで、ACは✕ということは確かにできそうです。
ただ、その考えのもとでEを見てみると、どうでしょうか。
昔の賢人が「意図的に」作品を未完成のままにしたでしょうのか。
中にはそういう作品もあるのでしょうが、一般的な話と言えるのかというと……。
あくまで「昔の賢人」の作品なので、自然災害や紛失、戦乱などで章段が欠けてしまうケースのほうが多いのではないか。
だけど、それでも作品の価値は全く減っていない。
よって、すべてをキチッとそろえることに価値などない、と主張するための補足的な具体例ととらえるほうが解釈としてずっと自然なような気もします。
ただ、そう考えるとAと同じく「経年劣化で失われてしまったもの」になってしまうため、EだけをマルとしてAを否定することができなくなる。
よって、先ほどのロジックでDとEだけを正解にして、A~Cを✕だと言うためには、E「先賢のつくれる内外の文」を、「先賢」たちが意図的に未完成のまま放置した、という前提で解釈しないと答えが成立しなくなるのでは? と思うわけです。
もちろんそういう解釈も可能だとは思います(ちょっと検索してみましたが、その前提で訳しているサイトもありました)が、ちょっと解釈として強引すぎると感じますし、少なくとも本文中の記述だけでは判断できず、仮にその解釈が正しかったとしても中3の試験で問える内容ではないように感じます。
中3 全体を通じて
2021年度のように、難易度がものすごく低いわけでもなく、適切なレベルに戻ったな、と思います。
ただ、小説と古文ですね。
ちょっと問題として詰めが甘く、「この答えだとなんで✕なんですか」と各地の塾の先生が質問されて、答えに窮してしまうのではないかな、と。
あとは、先ほども言いましたが8月がどうなるか、大いに注目しておきたいと思います。
中2 大問1(漢字)
「履修」「類いまれ」がちょっと難しいでしょうか。
中2 大問2(資料と対話)
問1、問4
問題文の指示、資料A、資料Bをまんべんなく見せて答えを出す問題で、こういった資料問題の練習にはちょうどよいと思います。
細かい話ですが、問1模範解答の「昼食を含めて二時間しかない」、採点基準で「『二時間しかない』はなくてもOK」というなら模範解答じたいを「昼食の時間もかねている」にしたほうが自然だと思いますけどね。
「二時間」はそこそこ活動としては長い気もしますし……。
問2
中3で「ポライトネス」の問題を出して、中2で日本語能力試験的な「コロケーション」の問題を出す。言語学的な流行の要素を問題に少しずつ散りばめている感じなのかな、と。
中2 大問3(小説)
出典:重松清「せいくらべ」
いい話です。
中3のような「部活がんばる少年」の話もたまにはいいですけど、こういうのをもっと読みたいですよね。
問1
文中からそのまま抜き出して使えるような箇所はないけど、リード文の状況を理解して考えれば明確に答えが出せる良問です。
適当に本文をコピペするだけでは解けない問題の比率がもっと上がるといいな、と思っているわたしとしてはこういう問題は大歓迎。
問2
エを選んだ人が結構いるかと思いますが、こういうのを「深読み症候群」とわたしは呼んでいます。
「お隣さん」にどこかから見られている可能性はもちろんゼロではありません。なので、エのように主人公が無意識に思っている可能性はあるわけです。よって、エの選択肢を丸ごと否定することは本来できない。
ただ、あくまでも傍線部に「カメラはついていないはずだけど」と書かれていること、さらに本文の他の箇所に「お隣さんに見られている可能性を主人公が念頭に置いている」とわかる記述がないこと、以上2点の理由でエは答えにはなれないのです。
小説は「根拠・証拠が本文にあること」しか答えにはなれません。
「エのように主人公が思っている可能性だってありますよね?」と言われたらそれは確かにそうですが、それでも正解にはならないのが受験小説の世界です。
「~かもしれない」は答えの根拠にならないのだ、と授業でわたしはよく言っています。
問3~5
いずれも標準的なレベルの妥当な問題だと思います。
中2 大問4(評論)
出典:森下育彦「『私』を伝える文章作法」
「人は一度書き終えた文章を必ず読み返すものです」
と冒頭にありますが、皆さん、ちゃんと自分の記述答案、読み返してから提出していますか?
書き終えて読み返しもせずに出しただろオマエ、と言いたくなる答案をよく見るこの商売ですが、筆者のこの言葉を肝に銘じ、ちゃんと読み返してから人に文章を見せるよう習慣をつけていただきたい。
その導入部分から始めて、書き言葉と話し言葉、という定番の対比関係へと進んでいく。
展開も自然で、わかりやすく読みやすい文章だと思います。
問3(2)
「筆者は何度も読み返す」「エネルギーを使う」「時間をかけて書く」と書いたら✕なのでしょうか?
空欄の次にXさんが言っている「大切な営みでもある」の説明になっていない、と言われるかもしれませんが、それを言ったら模範解答の「人は書くのだ」だって、何が「大切な営み」であるかの具体的な説明にはなっていないので。
中3と同様、普通に自然な文字数で記述させればいいだけのものを、無理やり短い字数の穴埋め形式にしたせいで設問に無理が出ていると思います。
問4
条件をおさえて、その条件をもとに本文をベースに解答を作る、という記述の基本的なところが求められています。
・「一回性」の定義を理解できていること
・問題文の「鑑賞者vs作り手」の対比をもとに書くという指示をつかんでいること
の2つが出来ていれば正解できます。
要求されていることはスタンダードなのですが、「一回性」概念が中学国語だとおそらく馴染みが薄いと思うので、試験後半の時間がない中でこの問題に取り組むとうまく読み取れずに終わってしまった人も多いように予想しています。
この問4は高校受験での記述問題を理解するにはうってつけの題材だと思うので、模範解答をただ見るだけではなく、問題文をどう読み、本文をどう見れば正解が出せたのかを自分で説明できるまで、キッチリ復習すべきだと思います。
いい問題ですよ。
中2 大問5(古文)
出典:鈴木牧之「北越雪請」
全訳は道コンの解説に掲載されていますので、そちらをご参照ください。
「鈴木牧之」という全然古文っぽくない筆者の名前、誰だろうと思って調べてみたら「すずき ぼくし」と読むみたいです。
鈴木牧之記念館もあるんですね。
Wikipediaより引用(部分略)
『北越雪譜』(ほくえつせっぷ)は、江戸後期における越後魚沼の雪国の生活を活写した書籍。初編3巻、二編4巻の計2編7巻。著者は現在の新潟県南魚沼市塩沢で縮仲買商・質屋を営んだ鈴木牧之
雪の結晶のスケッチから雪国の風俗・暮らし・方言・産業・奇譚まで雪国の諸相が、豊富な挿絵も交えて多角的かつ詳細に記されており、雪国百科事典ともいうべき資料的価値を持つ。1837年(天保8年)に江戸で出版されると当時のベストセラーとなった。
難易度はさほど高くないと思いますが、今回は「ひらがなで書かれた箇所を、自分で漢字を当てながら読む」ことができれば良かったと思います。
「いふやう=言うよう」
「いたり見る=至り見る」
「手をつくしたる=手を尽くしたる」
「ゆゑ=故」
「うへこす=上越す」
「かろくつくりおきて=軽く作り置きて」
こんな感じで。
中2 全体を通じて
レベルとしては適切だと思いますし、なかなかいい問題が揃っているとは思いますが、ちょっとボリューム的に時間きつかったですかね?
50分ならまぁいいと思うのですが、40分で中2生だと厳しいかも。
大問3では問2以外全部記述ですし、しかも文章ボリュームもそこそこありますから、小説で時間食ってしまったケースが多そうな気がします。
大問4はちゃんとした記述と呼べるものは問4だけですが、その問4がそこそこの難易度。
どうでしたでしょうか。
中1 大問1(漢字)
標準的なレベルの出題と思います。
中1 大問2(資料と対話)
資料Aの文章量が多く、内容がまさしく「実用文」と言ったもので、解いていて何一つおもしろくない問題ではあります。
時流には乗っていると思いますし、「模試」としてはぜんぜん悪くないんだと思いますが、共通テスト英語もそうですが、これからどんどん読解試験が「無味乾燥」なものになっていくのでしょうか。いやですね。
こういうタイプの問題だと、冒頭から文章をひとつずつしっかり読むことがバカバカしくなります。
設問と選択肢を先に読んで、本文に逆戻りする形で解いたほうが圧倒的に早い。
中1 大問3(小説)
出典:福田隆浩「幽霊魚」
中3の「部活モノ」もそうですけど、「少年が魚釣りする話」も妙に多くないですか。
なぜそんなに少年に魚を釣らせたがるのか。
「英治の母親が男の人と島を出ていってから、英治の父親はふさぎこむようになり、仕事もしなくなっていった」
重い。
中1に読ませるとは思えない状況がとてもいいですね。
むしろこの話が読みたい。
だいたい、標準的なレベルで妥当な問題だと思いますが、さすがに問2は簡単すぎないですかね。
まぁこういう問題も1つぐらいあってもいいのかも。
中1だし。
あと、リード文で「幽霊魚=大事なものをぜんぶ取り返せる」という重要な設定に触れているのに、それに関連した問題がひとつもないのは素材を生かしきれていないように思えてちょっと残念かな、と。
「英治は/主人公は、なぜ幽霊魚を捕まえたかったのか」を明確に問う問題が1題はほしかったです。
中1 大問4(評論)
出典:池内了「なぜ科学を学ぶのか」
大問2で無味乾燥な「実用文」を出しておいて、大問4で「実用科学vs基礎研究」を対比させてくるの、意識してやっているのか定かではありませんが、皮肉が利いていていいですね。
これ、意図的にやっていたら問題作成者を心から尊敬してしまいます。
「実用科学」と「基礎研究」は中1生ではなかなか考えたことのないテーマだと思いますし、素材文としてもなかなか良い。レベル感も適切だと思います。
問2
直後にある「霞を食べて生きる」という意味がそもそも理解しにくいと思います。
ちょうど最近高校生相手に「霞を食べる」という話を解説したことがあるのですが、高校生もほとんど知りませんでしたし。
後ろを文末まで読む習慣がついていれば「あるいは」は選べたと思いますが、結構難易度高い問題だと思います。
問3
答えは直後の段落をほぼそのまままとめるだけですが、問題文の条件が複雑めなので、問題文の指示を把握できたかどうかで勝負が決まる問題かと思います。
これで、答えの箇所が本文中に分散していたら中3生でも難しい問題になっていたと思いますが、中1生ということを考えると難易度的にもちょうどよかったかな、と思うのですが、問4と問5もなかなか考えさせる問題なので、大問4全体で考えると中1生に40分で解かせるのはちょっと厳しい?
まぁ、でも古文がない分こんなもんかもしれません。
問4
比喩を問う問題を入れてくるのも、バランスよくていいですね。
問5
まず「無用の用」という逆説的な言い方を理解できるかどうか。
「無用の用」というフレーズだけでわからなくても、今回は直前に指示語「これを」があるので指示語をもとに「無用の用」の意味を探ることができます。
すると「無用」の意味は46行目「経済論理や商業的利用につながらない」ことだとわかる。
「用」の意味は47行目「科学のため、文化のために」役立っていることだとわかる。
あとは、「科学のため、文化のため」をさらに具体化するかどうかですが、採点基準上は「科学のため、文化のため」をそのまま書いてもちゃんとマルになります。この採点基準も妥当なものだと思います。
うん、大問4はかなり練られた良問だと思います。
中1 全体を通じて
小説がちょっと問題として面白くないな、とは思いましたが、それ以外はすごく良い問題だったと思います。
分量的にも難易度的にも適切でしょう。
特に大問4、出来が悪かった人も良かった人も、復習する価値のある問題だと思います。
文章の隅々まで理解できるよう読み返すべきだと思います。