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2021共通テスト第2日程小説
更新日:2022年1月12日
増刷御礼
編集さまよりご連絡をいただき、「古文単語速読マスター」増刷決定したとのことです。自分でいうのもアレですが名著だと思いますので、もっと広まってもらいたいところです。
なんでも、高校さまで正式採用される話があるとか……。
ありがたい限りです。
いろんな高校で採用されるべき作品だと思う。
また「古文単語速読マスター」は、完全準拠の単語テストをFiveSchoolsサイト上で完全無償公開しています。Wordファイルでダウンロードできるので、使ってくださる先生は自由に改変、加工してくださってOKです。
共通テストレビュー
では、いよいよ共通テストレビューも今回が2021年度ラストです。
小説に行きましょう。
出典:津村記久子「サキの忘れ物」
第1日程の「羽織と時計」が1918年の作品で、これが2017年の作品ですから、第1日程と第2日程の小説でまるまる一世紀分のタイムラグがあるわけです。
仕方ないことではあるのですが、ここまで時代が変わってしまうと、もはや同じ「現代文」というカテゴリーで括るのも憚られるレベルではあります。
かなり前の記事でも言っていますが、もはや今の生徒たちにとって、明治どころか昭和初期レベルの文章も「ちょっとした古文」なんですよね。
明治の文語文対策は、一橋を受けるひとはだいたい皆必死こいてやりますが、そうでなくてもこういう「ちょっと古い日本語」に慣れる機会を意識的に作っていかないと、共通テストでこういう時代の文章に当たったときが痛いです。
問題全体としては、難易度もごく標準的、問6が若干「新傾向」と言えなくもないですが、こういう「生徒と先生の対話」形式なんて今や何も珍しくないですからね。
第2日程評論と同様、「共通テスト」としての新機軸を打ち出そうという意欲じたいが全くと言っていいほど見られない試験ではあったと思います。
それが悪いというわけではないのですが、あそこまで混乱を招いておいてコレだったら「あの騒ぎは何だったのよ」と言いたくなるのは仕方ないことですよね。
まぁ、とはいえ文句言い過ぎて「じゃあ変えてやればいいんだな?」となっても困るのですが。
では内容の話へ。
全体的な読解ポイント、解法は「やさしくひもとくく共通テスト」で池上先生が説明していますから、ここでは村上が「気になったポイント」「注目したポイント」を中心に語ります。
・タイだけだけ見たら「サキ」が主人公だと思いますよね。
まさか(登場人物としては)「サキ」が登場しないとは……
いきなり意表を突かれます。
・6行目「ここに忘れててよかった、というのはなんだかへんな表現だと千春は思う」の部分は要注目。
→「具体的な思考」が描かれているところは重要、の法則
→「普通の人が思わないようなことを思うところ」は重要、の法則
・11行目「千春は、頭の中でそう言いながら」に要注目。
実際は「常連客の女」に話しかけていない。なぜ?
常連客なら、この程度の会話はする方が普通では??
→「普通ではないところ」は重要、の法則。
・11~12行目「千春が誰かに何かを~」の部分にも要注目。
千春は、他人に興味がない?
→「人の性格がわかるところ」は重要、の法則。
・23行目で、実際に千春が常連客に話しかける
さっきは話しかけなかったのに、なぜ??
20行目「いい匂い、と言った。初めてのことだった」ことがきっかけになっていると判断可能。
→「変化があれば、何らかの原因がある」の法則
・25行目「千春はその表情(=笑顔)をもう少しだけ続けさせたい、と思って」
常連客への明確な好意。
・29行目、常連客の女の「病院」の話を、千春が完全スルーしている。
→問2①が✕である根拠。
・34行目、千春が「年を訊くのは失礼にあたるかもしれない」
・41行目からの、「自分が黙ってしまったことで~」
千春が常連客の女に明らかに気を遣っている。
→問6のⅡの⑤が✕である根拠。
41行目からの部分は複雑なので、誤解していないか確認してください。
「高校を中退すること」について、「千春本人」は「何の意欲も持てないことをやめたに過ぎなかった」と思っている。「~に過ぎない」という言い方は「たいしたことではない」という意味を含む。
一方、「世間一般」では、高校中退は一大事として重く受け止められる。
よって「世間一般」である「常連客の女」に高校中退について話すと、必要以上に重く受け止められてしまうので、千春は話すのをやめた、ということ。
プラス、11~12行目で「他人に興味がなさそう」な表現があったことを思い出す必要がある。「他人に興味がなさそう」であることに加えて「何の意欲も持てない」ということは、やはり「消極的」な性格のキャラであることがこのへんで明確になってくる。
千春のキャラが明確化してくると同時に、千春の思考内容が複雑で、かつ答えの根拠になる部分も大量に出てくるため、この40行目前後を正確に読めたかどうかが今回の大きなポイントになったはず。
・46行目「サキの本のことが気になって」
あくまで「本の内容」を気にしている。常連客の女が忘れていったことはあくまで一つのきっかけ。
→問3の②が✕である根拠。
・57行目の段落は、まるまる千春の心情の吐露なので、すべてが解答根拠になると言ってよいレベルで重要。
→「具体的な思考」が描かれているところは重要、の法則。
「傍線部の近くにあるから重要」というわけではないが、結果的にそうなってしまった。
・64行目の、常連客の女の行動「いらなかったらいいんですけど」「もしよろしければ」「一人じゃ食べれない」「持って帰るのが重い」
→繰り返された動作、行動は「共通点」を考えるべし、の法則。
行動の共通点は、人の性格を教えてくれる。
問6のⅠ「気遣い」がここと対応していることがわかる。
・74行目「牛の話」を読んだときの千春の感想。77行目「自分の家の庭に牛がいて」、79行目「様子を想像していたい」、83行目「想像していて」と、3回も「想像」をあらわす内容が繰り返される。
→問4はここさえ押さえれば即答で答えが出せる。
→「本文中で繰り返されるものは重要」の法則。
こんなところでしょうか。
こうして見ると、問題を解くのには支障がないけれど、今ひとつ腑に落ちないところが多いんですよね。
・なぜ、千春が常連客の女をそこまで気にするのか。
冒頭で「へんな表現だと思った」のは分かるが、それだけでここまでこの常連客の女を特別な存在として扱う理由にはならないだろうし……。
問6の空欄ⅡのところでBさんが「そうか」と納得しているけど、この流れでなぜ「そうか」と納得できる要素がどこにあるのか、どうも腑に落ちない。
千春にとって、常連客の女が「わざわざ話しかけたい」「笑顔を見ていたい」と思うほどの存在になったきっかけがこの切り取られた部分を読んでも判然としない。
・なぜ、サキの本がそんなに気になったのか。
常連客の女だけでなく(それも謎だけど)、本の内容に関心を持ったきっかけが本文中で語られていないのでスッキリしない。
いや、もちろん「高校在学中」からのあれこれがあって、という流れはわかりますよ。ただ、なぜ「この常連客の女」がきっかけになったのか、なぜ「サキの本」でなければならなかったのか、その必然性について納得がいかないんですよね。
まぁ、注釈を見るとビルマの件などいろいろ書いてあるので、出題部分の前を読めばきっと腑に落ちるのでしょう。
・70行目から73行目の、谷中と菊田の意味深なセリフと態度
73行目「ちょっと暗い声で答えた」とは一体何なのか?
きわめて意味深なのに、問題では一切触れられておらず、本文のどこを読んでも説明がなく意味がわからない。
リード文も長いわりにはこのへんの前提状況を与えてくれないし、注釈も歯にモノが挟まったような書き方しかしないし、結局この話が何だったのかどうにもこうにもスッキリしないんですよ。
本文全部読んだ人にとってはこれで納得できるのでしょうが、この切り取られた部分だけだと情報が足りなすぎる。
その意味では、悪名高い2011年「海辺暮らし」と同じ匂いを感じてしまいます。
(「悪名高い」って、本文ではなくて問題&選択肢が、です。本文は面白いです)
出題者は全部を知ったうえで出題できる分、かえって「切り取られた場面しか読まない/読めない」受験生のことをリアルに想定できなくなっているのでは……という疑問が出てきます。
(「海辺暮らし」と違って、問題じたいは普通に全部解けてしまうので、問題視する人もほとんどいないのだと思いますが)
ということで、個人的にどうにもこうにもスッキリしないので、今日「サキの忘れ物」自分で発注して買ってしまいました。
来週には届いているでしょうから読んでみて、何か新発見があればここに追記するか、別の記事で追加更新しようかと思います。

ということで買いました。
うん、やはり全部読むとだいぶ印象変わりますね。
ネタバレになるとアレなので内容は語りませんが。
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