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ひとつひとつ改訂版/2021共通テスト第2日程評論
更新日:2022年1月12日
重要告知
もう告知してもいいのかどうかわからないんですが、Amazonに出てしまっているので良しとしましょう。
デビュー作「高校現代文をひとつひとつわかりやすく」が2月に大改訂されます。

主な改訂点は次のような感じです。
根本的な内容は今のバージョンと同じです。
・「解答解説」のボリュームが3倍ぐらいになります。
旧版では「問題の解説」が中心で、「本文内容の解説」が薄かったのですが、今回はその「本文内容の解説」を若干しつこいぐらいに書き足しました。「シリーズの中で圧倒的に解答解説のボリュームが多い」と編集のひとがおっしゃっていました。
電子書籍版としてひっそり「解答解説超くわしいバージョン」をリリースしていたのですが、それが改訂版では最初から本冊につくイメージになります。
・第4章「文法編」は全てカットされます。
「文法編」は改訂版には付きませんので、そちらが必要な方は旧版をお買い求めください。
なぜ「文法編」がカットされたかというと、前述のとおり「解答解説」がボリュームアップしすぎた結果、紙面が足りなくなったというのがワンポイント。
そして最大の理由として、この「文法編」は別の形で今後再リリースされる予定があります。
そちらと重複してしまうために改訂版ではすみませんが除かせていただくことになりました。
「別の形」をきちんとリリースできるように今後がんばりたいと思っておりますが、現状の進捗率は25%ぐらいです……。
・オールカラー化、デザイン性向上
旧版は正直わたしのやりたいことを無理やり誌面に詰め込んだため、かなりデザインがキツキツで若干見にくいところがあったかと思います。
今回はその中でムダを省き、必要なところだけを残し、結果として大幅にスッキリとした読みやすいデザインに進化したと思います。
それに伴い、「演習問題」がそれなりに追加されています。従来よりも演習量が増えますので、その点でもより実力アップに寄与できる本になったのではないかと思います。
共通テスト第2日程(評論)レビュー
「やさしくひもとく」作成の都合上、古文と漢文のみアップしていてその後完全放置していた「共通テスト第2日程」レビュー。
(第1日程は全部アップしています)
そろそろ共通テストも間近に迫ってきて、最後の確認として過去問演習に取り組んでいる受験生も多いことでしょう。
ということで、やり残していた「第2日程評論」を今週、「第2日程小説」を来週レビューしたいと思います。
出典:多木浩二『「もの」の詩学』
「道具」の歴史的変化を追いかけながら、その社会的背景を分析していく、という入試現代文ではオーソドックスな内容と展開で、特に前半はかなり読みやすかったのではないかと思います。
本文読解
(1段落)
椅子についての「問題点」が2つ
① 硬いので人体を圧迫、血行を阻害
② 上体が緊張、苦痛
(2~3段落)
17世紀に椅子の背もたれが後傾
=問題点②に対する解決策
(4段落)
・同じ時期(=17世紀)に、問題点①に対する改善も行われる
・古代から中世から行われていた対策=クッション
・クッションに、社会的ステータスを示す働きが生まれる
4段落が若干話が込み入っていて読みにくいかと思います。
17世紀と古代中世の話が入り混じっているのと、「社会的ステータス」という、1~3段落の流れと関係なさそうな話が入り混じっているので、本題が何だったのかを見失ってしまわないよう粘り強く読む必要がある。
(5段落前半)
17世紀に起こったこと=クッションと椅子の一体化
ここまでが「前半」の内容と言えます。
要するに「17世紀に椅子が人体にやさしくなった」という話でしかないわけです。
ここから先の意味が理解できなくなった受験生は、次の質問に答えるつもりで5段落後半から続きを読んでみてほしいです。
「椅子が人体にやさしく変化したことを、現代人はどのように解釈するのか」
「17世紀の人間にとっては、実際はどのような意味を持っていたのか」
「椅子がやさしく変化したこと」について、「現代的解釈 vs 17世紀の解釈」という対比関係をもとに文章を整理してみるとうまく意味がつかめるはずです。
(5段落後半~6段落)
・現代人は、この変化を「純粋な身体への配慮」「機能化」「椅子と身体との関係で説明できる」ものだと思う。
→逆に言えば、17世紀の発想では「単に身体に配慮しただけ、椅子の機能を向上しただけ、椅子と身体との関係だけ」で説明できるものではない。
・17世紀では、この変化は「宮廷社会、身分社会」と、「その社会の中での身体・振る舞い」と結びついて起こったものである。
「宮廷社会、身分社会」と聞いて、ピンと来た人は前半の内容がよく読めています。
そう、4段落に書かれていた「社会的ステータス」の話です。
つまり、椅子はただの「モノ」ではなく、何らかの「社会的ステータス」と結びついて成立した道具である、ということですね。
現代社会では椅子なんてニトリでもIKEAでもどこでも誰でも買えるものですが、当時はそうではなかったわけです。
では、ここでいう「宮廷社会の中での身体・振る舞い」とは具体的に何なのか、それと椅子がどう関係するのか、を7段落以降から読み取ればOK。
(7段落)
・貴族らしい服装(貴婦人の広がったスカート)に合わせた椅子の形状になる
→よって、椅子じたいが「貴族らしい形状」になる
→椅子に「貴族としての社会的ステータス」が生まれる
実質的には4段落の「クッション」の話と同じなので、6段落の内容がきちんと整理できていれば7段落の理解は難しくないと思います。
むしろ、6段落で「現代人の発想 vs 17世紀人の発想」という対比関係を見逃してしまうと、もはや7段落は何の話をしているのかが見えなくなってしまうので、この文章最大のヤマ場はわたしは6段落だと思います。この文章をうまく処理できなかった人の多くは、6段落の読解を失敗しているのではないか、と予想しています。
この7段落で話が終わっていればシンプルだったのですが、ラスト8段落でさらに内容が進展します。
(8段落)
貴族中心社会から、ブルジョワ中心社会への変化
では、椅子はどうなる??
→貴族らしい椅子を「受け継ぐ」 + ただしブルジョワらしい「働く」身体に合わせた形にアレンジ
設問解法
問題は、もはや「共通テスト」らしく新機軸を入れよう、新傾向の問題を出そうという意欲さえも放棄した感じで、完全にただのセンター試験そのままです。
2022年はどうなるでしょうね。
◎第1日程のように、取って付けたように最後の問題に「複数テキスト」を入れてくる
○第2日程のように完全にセンターそのままになる
△試行試験のように、大幅に変え、実用文や詩なども織り込んでくる
こんな感じで予想していますが、まぁ所詮予想は予想です。
上記3パターン、どれが出ても大丈夫なように練習しておけばいいのです。
問2
誤った選択肢は、すべてそれぞれ「時期」が違っています。
この部分は「古代」「中世」「17世紀」「17世紀後半~18世紀」という4つの時期が入り乱れているので、このように「時代のズレ」で引っかけようとする選択肢を作ってくるのは容易に予想できます。
間違えた人は、どれが、いつの時期の話なのかをもう一度本文と照合してみてください。
問3
「裸の身体」=生理的な身体、身分に関係のない身体ですので、これはつまり「現代人」の発想を表現している。
「着物をまとった身体」は、「着物=貴族の衣装」ですから、これが「宮廷社会と結びついた」17世紀の発想を表現しているわけです。
①は「国境と身分を超えて」……超えていない。超えてしまうのは現代の発想であって、当時は逆。
③は「解剖学的」が現代の発想なので✕。
④は「欲望を隠す」という内容そのものが本文に全く書かれていない、としか言いようがない。
⑤は「生理的な快適さを手放してでも」……手放していない。手放してしまうのなら、前半の内容は何だったんだ。
問4
ラスト8段落の内容。
ただ、注意すべきは傍線部に「ブルジョワ」「貴族」という言葉が出てこないことです。
つまり、この傍線部は「ブルジョワ」「貴族」に限定された内容ではなく、もっと一般された、普遍的な内容を表しているということ。
もう一度8段落の内容を確認しましょう。
(8段落)
貴族中心社会から、ブルジョワ中心社会への変化
では、椅子はどうなる??
→貴族らしい椅子を「受け継ぐ」 + ただしブルジョワらしい「働く」身体に合わせた形にアレンジ
これって、別に「ブルジョワ」と「貴族」の関係じゃなくても、いつの時代でも起こることだと気づいてほしいのですね。
平安時代には「遣唐使からの文化を受け継ぎつつ、国風文化にアレンジ」したわけですし、鎌倉時代には「平安貴族の文化を受け継ぎつつ、武士の文化にアレンジ」したわけですよね。
明治時代には「江戸までの日本文化を受け継ぎつつ、西洋からの文化を取り入れてアレンジ」したわけですし、今のわれわれは「コロナ以前の文化を受け継ぎつつ、コロナに合わせた文化へと変化しつつある」わけです。
だから、④はダメなんです。
④は「働く身体に、ものの形態を多様化させる力がある」
と書かれているので、逆に言えば「働かない身体には、そういう力はない」と読めてしまう。
働かない貴族たちも、それ以前の文化を受け継いで自分たちなりにアレンジしたわけですから、働こうが働くまいが変わらないのです。
よって、「働く」身体と限定せずに、正しい内容を述べている⑤が正解になります。
①……「実用的な機能ではなく」が✕。
②……「帰属」が✕。ブルジョワのほうが立場が上になっているので、「帰属」だと貴族のほうが上になってしまう。
③……「宮廷文化の解消」が✕。
①~③は簡単なので、これで引っかかっているということは文章が読めていないと判断せざるを得ない。
問5
①……「最終的に生理学的問題として解決できる」が✕。全く逆なので、これを選んでしまったなら、後半の内容が何も理解できていない証拠。
②……「6段落以降でも同じ議論を継続」が✕。これも①と同様、後半が何も理解できていない人しか選ばない選択肢です。
④……5段落以前が「もの」、6段落以降が「身体」などという分け方ができるはずがない。ずっと一貫して「ものと身体」の関係を論じているわけです。④を選んだ人は、「テーマ」づかみが曖昧なのだと思います。
本文が理解できている人にとっては非常に簡単な問題です。これを間違えた(特に①②で)ということは明らかに「読めていない」ので、「解き方」ではなく「読み」に向き合った勉強をしないといけません。
問6
①……いきなり嫌な選択肢です。
「人体への生理的配慮」という意味で、文章「前半」の内容としては正しいんですよね。ただし、この文章の趣旨は明らかに後半にあるので、趣旨を表した選択肢とは言えない。ただ、本文に書いてあるといえば書いてある。
そこで、ポイントになるのは①の前の「先生」のコメントです。
先生「この文章では『もの』と『身体』との社会的関係について論じていましたね」
わざわざ「社会的関係」と念押ししている以上、やはり「社会性」に何も触れられていない①が「正しい選択肢」とは言えないでしょう。
ということで、①が一つ目の答え。
⑤……これはシンプルで、因果関係、順序が逆なのです。
「スマホの登場によって、人間の行動が変わった」
ということは、「もの」が先に出て、その結果「身体」が変化するという内容ですよね。
本文では「人間の身体」が先にあって、それに合わせて「もの」が後から変化するのです。よって、話が逆なのでこれが二つ目の答え。
選択肢②なんかも、「身体ともの」の関係には触れられていますが、本文後半にあった「歴史的変化」に該当するか? と言われれば微妙ですからね。
②あたりを選んでしまった人は多いのではないかと思います。
では、来週は小説です。
・小学英語&国語
・中学国語・英語・数学
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・通い放題個別指導「FIVE学習会」
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