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2021年北海道公立高校入試国語レビュー

最終更新: 4月2日

2021年3月4日実施、北海道公立高校入試のレビューです。

問題と解答(北海道新聞サイト)


レビューするのは国語のみです。他教科は行いません。


標準問題

問1

特に難しいものはないです。すべて取りたい問題。


問2

「電池」は落とせない。「郷里」「刻」は上位校受験生にとっては簡単でも、標準問題層にはそれなりに難しいかも。「絹糸」はほぼ標準問題層ではかなり厳しいでしょう。

iいずせにせよ、問1に比べるとかなり難易度高めだと思います。


問3

「お~ください」の敬語表現は基本でもあり、頻出でもあります。これは取りたい。


問4

(1)未だに「書き順」などという「目安」にすぎないものを公的試験に出題する不見識は強く批判したいところです。今は令和だぞ。くわしくは以下のレビュー参照。

2020年学力テストB国語レビュー


(2)これは落とせないレべルでしょう。


問5

標準問題の基本パターンである抜き出し問題。こういう抜き出し問題は、本文理解は決して難しくないので、とにかく「空欄前後との接続」が最重要。

なんとなく抜き出してしまって、前後とのつながりが悪くなっている場合は間違いなく誤答ですので、必ず空欄と自然なつながりになっているかどうか、脳内で音読してチェックすることが必要。決して難しくはないが、ここを油断すると落とします。


大問1(語句・資料の読み取り)

問1

なんとなく出るような気がして「熟語の構成」は年末年始あたりに若干念入りに指導していたのですが、本当に出ましたね。

簡単なタイプの問題なので、あまり差はつかないでしょうが……


問2

(2)はさすがにわかると思うんですけど、(1)は「市役所の庁舎」なんて中学生そもそも馴染みがないじゃないですか。これは、わりと上位層でもやられるような予感が……いや、でも「校舎」は知ってるだろうから、「校舎」からの類推で解けるかも。どうだったでしょうか。


問3(1)

複雑化しすぎるきらいのある道コンに比べると、わりと資料そのものも、解答に求められる条件もシンプルな問題でした。

内容としては容易だと思うので、あとは「日本語として」ケチをつけられないように書けたかどうかだと思います。日本語として稚拙なだけで減点対象ですから、先ほども述べたように「脳内音読」しておかしな箇所がないかをチェックする習慣づけが必要です。


問3(2)

前回の2月道コンと同じく、資料の中から「共通性」を読み取る問題。

こういうタイプの問題、生徒はかなり苦手なんです。

ただし、今回はさすがにわざとらしいぐらいに資料がわかりやすく作られているので、「共通性を読み取る」ということさえ問題文から読み取れれば、だいたいの生徒は書けたのではないかと思います。


全体的に、道コンよりは簡単な仕上がりだと思います。


大問2(小説)

詳しくは鷹取先生が述べると思いますが、古い道コンの過去問がほぼそのまま出題されたようです。かなり古い年度なので解いたことのある生徒は決して多くないと思いますが。


出典:川上健一「雨鱒の川」


本文読解、特に心情のポイント

・(リード文)心平=過去に取り逃がした雨鱒を捕まえたい

・天気悪めで、暗いので、水中が見えにくい 

→ 入念に探す、緊張、期待

・雨鱒以外の魚興味なし 

→他の魚を相手にした音で、雨鱒釣りの邪魔になるのが嫌

→他の魚はいつでも捕れる

(=釣りに自信、雨鱒は手ごわい)

・雨鱒の魚影発見 

→「いつもの儀式」、見失ってなるものか

・雨鱒=一回消えて、また戻って、静止して、心平を見る

(=ライバルとして認知している?)

・心平=遠すぎて無理 

→ そっと近づこう

・雨鱒=逃げる素振りを見せない

(=正々堂々と勝負したい?)

・心平=斑点がきれい(=雨鱒へのリスペクト)

→一歩前進

・雨鱒=動かない、心平を見つめる(問2解答根拠)

・心平=万全に決めたい、意を決して近づく、緊張、雨鱒に完全に集中

・雨鱒=それでも動かない

・心平=心強さ、いつでも捕ろうと思えば捕れる(問3解答根拠A)

→急に手が震える

・雨鱒=逃げる

・心平=がっかり、緊張解ける、雨が降っていたことにも気づかないぐらい集中していた

→笑う、次は確実に捕れる(問3解答根拠B)

→希望と自信


ヤスといえば


問1

「17字ジャストの書き抜き」「~を探りながら」「対岸の森へ移動する前の内容」という3条件を問題から発見して、それに合うものを探すだけ。

ちょっと解答箇所が中途半端なので、一瞬戸惑ったかも。

でもここしかないですよね。


問2

傍線部は心平の心情なのに、答えるのは雨鱒の様子というちょっとねじれのある出題。

おそらく、間違えるとしたら「雨鱒が一回消えて、また戻ってきた」という内容を書いてしまったのではないでしょうか。

空欄の直前が「心平が近づいた」「雨鱒は逃げるそぶりを見せなかった」なので、少なくとも「逃げるそぶりを見せなかった」以降から答えを探さないといけない。

このように、空欄前後の情報から「答えがどのエリア、どの範囲にあるのか」アタリをつける能力というのは非常に重要です。

大問1~2の資料問題を解くうえでも必要になるスキルです。


問3

標準的レベルの記述問題。

A どのような経験をしたことがきっかけで

B どのような思いに至ったのか

という2点を答えること。そしてそれらの解答が、傍線部「希望と自信」につながる内容であること。これらを踏まえると、

A 雨鱒を射程距離内にとらえ、いつでもヤスで突ける状況まで追いつめた経験

B 次の機会には、必ず仕留めることができる

という2ポイントをまとめれば良いことは明白ですね。

深読みしすぎると「雨鱒とお互いに認め合えたという思い」みたいに書いてしまいそうですが、ちょっと根拠が弱すぎて入試の解答としては厳しいと思います。


(参考 村上の回答例)

雨鱒の頭上で、いつでもヤスで突ける状態まで雨鱒を追い込んだ経験を得て、次の機会には必ず雨鱒を仕留められる自信を得たということ。


問4

おそらく「緊張が解けたときの落差」をヒントにするのが最も答えにたどりつきやすかったのでは。「緊張が解ける場面」で、直接的な心理描写ではないもので、5字以内で書けるものとなれば答えはこれしかないでしょう。

「背中の水滴」「気温」あたりが誤答としては多そうな気がしますが、これは「緊張が高まっているとき」には表現されていない(気づいていないことは表現しようがない)ので、やはり答えには合わないことがわかります。


多少解答形式にクセがある気はしますが、難易度、レベルとしては標準の範囲ではないかと思います。


大問3(裁量問題・説明文)

読解のポイント

リード文

・「伊藤の時代=江戸時代がどのような時代であったか」というテーマを先に把握しておく。

1段落 

・ここで言う江戸=元禄時代であること

(元禄以前vs以降で対比しながら趣旨をつかむ)

・元禄時代の特徴=農業生産力&流通の拡大、経済発展、それによる文化発展

2段落

・元禄時代の特徴=商人、町人中心(not武士)

3段落

・伊藤の時代=元禄よりはちょっと後

4段落

・伊藤時代の特徴=「2つの相反する要素」

・「2つの相反する要素」とは?

①幕府の権力構造の硬直化

②町人の文化のさらなる隆盛

・伊藤時代の特徴=「近代的な個の意識の誕生」

5段落

・伊藤時代の特徴=「美術にも、2つの流れが同時存在」

6~8段落

・「美術の2つの流れとは?」

①幕府の美術=「型」にはまった模倣を中心とする美術

→豊かさが外部へ広がる=遠隔地に文化を伝えるには「型」が必要

→「型」の上に個性が開いていく=「型」は決してマイナスなものではない

9~10段落

②町人の美術=珍しいもの、新しいもの、見たことがないものを求める

11~12段落

個の意識、階級制度への疑問を解き放たせる役割


読解としては、4段落まではある程度力がある生徒なら問題なくついていけるでしょう。

ただ、5段落「美術状況~大きな二つの流れ」の「二つ」が何を示しているのかが分かりにくく、ここが混乱の出発点になっただろうと思います。

特に「大きな二つの流れ」のうち「二つ目」が登場するのが9段落ですから、読解体力のない生徒は9段落にたどり着く前に全体の趣旨がアタマから抜けてしまったことでしょう。

ここの前段である4段落の「2つの相反する要素」を十分アタマに刻み込めたかどうかが勝負を分けると思います。

つまり今回の文章の根底には常に「幕府vs町人」という対比構造があること。

これを忘れずに文章を追いかけてさえいければ、後半になっても流れを見失うことはなかったと思うのですが……なかなかこれができる生徒は多くないでしょうね。


問1 

容易。上位校生では全く差がつかない。


問2

最近流行りの「傍線部のない問題」。

問題文の趣旨をつかむトレーニングは、傍線問題であっても必須ですので、このタイプの問題はいい練習になります。

空欄前後の内容からヒントを把握して、本文の正解箇所にたどりつく基本解法はこの問題でも同じ。

好きですね、北海道はほんとうにこのタイプが。全体で1問ぐらいはあってもいいと思いますが、ちょっと過剰だと思います。


問3

またしても空欄前後の把握から出発する問題。

サンドイッチマンが脳内に登場してきました。

そんなに選択問題出したくないんですかね。


問4

まずは、問題文を分析してみましょう。

問題文で答えるよう要求されているのは「斬新な表現が果たした役割」です。問題文で直接問われていることはここだけ。当然、


ポイント①「人々の心を自由に解き放つ役割」


というのが最重要ポイントになります。わたしが採点するなら、ポイント①がない時点ですべて0点にしますが、公式採点基準だと、ここがなくても点数はつくようです。


ただ、これだけだと15字程度です。

求められている字数は105字程度(なんだその中途半端な設定は?)ですので、問題文に書かれているもう一つの条件である「個人意識がどのように関係するのか?」という問いに着目する必要があります。すると、


ポイント②「個人意識が、斬新なもの、斬新な表現を人々に求めさせた」

ポイント③「個人意識によって、表現の個性を尊重する考えが生まれた」


この2ポイントを解答すべきだと導けます。

ただ、字数から考えると「なぜ個人意識が生まれたか?」ももしかしたらポイントに含められているかもしれない……と思い、次のポイントもできれば答案に入れておきたい。


ポイント④「個人意識は、当時の町人文化の隆盛を背景に生まれた」


これらをまとめると、こんな感じになります。


(参考 村上の回答例1)

町人の産業、文化の隆盛によって芽生えた個人という意識は、表現の世界でも個性を尊重する姿勢や、目新しいものへの好奇心を人々にもたらし、結果生まれた数々の斬新な表現が人々の心をさらに自由に解き放つ役割を果たした。


これで104字。

こんな答案サラッと作れる生徒いたら、今の時点で国立大学で戦えるな、すげぇ問題出すな……と思っていたんですが。


なんでしょうね、この模範解答&採点基準は。

抜粋しますね。


模範解答

庶民の間に芽生えはじめた個人という意識が、もの珍しいものや新しいものに対する好奇心へと発展していったことを背景にして求められるようになった斬新な表現は、自己表現を求める人びとの心を自由に解き放つ役割を果たした。


採点基準

①庶民の間で芽生えはじめた個人という意識が、もの珍しいものや新しいものに対する好奇心へと発展していったこと背景にして斬新な表現が求められるようになったことと、

②斬新な表現が人々の心を自由に解き放つ役割を果たしたこと

の二点が、適切に表現されているものを正答とし、いずれか一方を欠いた場合は三点を減じる。


いや、基準①ってただ模範解答例の前半8割をコピーしただけじゃないですか。

こんなの「基準」って言わないですよ。

(まぁ、各学校の裁量で細分化するのでしょうが……)


まぁ、わたしが取り上げた④が基準に含まれていないのはまぁ別にいいんです。

問題文で直接求められているわけじゃないですから。

でも「何の要素が答えに書かれているべき本質なのか」がまったく示されていない。

これだと基準としての体を成してないと言わざるを得ない。


模範解答の文章も、あまりに冗長すぎると思います。


本文の表現を、何もまとめもせずにダラダラ羅列しているだけ。

105字などという過剰な字数設定は、本来必要ないんです、この程度の内容だと。

80字以内、多少緩くしてもせいぜい80字程度/90字以内がいいところでしょう。

試しに、模範解答の内容を、内容は全く変えないよう推敲してみましょうか。


(参考 村上の回答例2)

庶民の間に芽生えはじめた個人意識が新しく珍しいものへの好奇心を生み、結果もたらされた斬新な表現によって、自己表現を求める人々の心を自由に解き放つ役割を果たした。


模範解答の内容を十二分に表現できていますが、これで80字ジャストです。

こういう問題ばっかり出してるから、北海道の高校生はいつまでたっても「本文をコピペしてツギハギするのが国語」という認識から抜け出せないのだとわたしはわりと本気で思っています。入試問題の甘さが高校生以降の勉強に悪影響を与えている。


問題も、わたしなら「斬新な表現が生まれた理由を含めて90字以内で答えよ」のように問題文に指示を入れます。

今回の問題の指示「個人と言う意識がどのように関係したのか」は指示として曖昧すぎますし、問題文だけを見たら何を答えていいのか全く判然としない。

「個人という意識」と問題文に書いてあるんだから、「個人という意識」について書かれている箇所を本文からコピペしてくればいいんだろ? というだけの安易な問題に見えてしまいます。

文章がとても面白いもので、問題じたいも悪いものではないだけに、問4の解答&採点基準については残念に思います。


大問4(古文)

現代語訳

訳は基本的に直訳ベースで、意訳せずに訳せるところはできるだけ意訳せずに訳しています。

また、訳の正確性は一切保証しません。この訳を引用、利用したことによる損害には一切責任を負いません。


 博雅三位という人が、月が明るい夜に、直衣姿で、朱雀門で遊んで(=詩歌管弦の遊びをして)、一晩中、笛を吹いていたところ、同じように直衣を来ている男が、笛を吹いていたので、(博雅三位は)「誰だろう」と思ったときに、その笛の音がこの世に他にないほど素晴らしく聞こえたので、不思議に思って、近寄ってみたところ、まだ見たことのない人であった。自分(=博雅三位)も何も言わず、その人も何も言うことがない。このように、月の夜は毎晩、お互いに行って、(笛を)吹くこと、何夜にもなった。

 その人の笛の音は、特にすばらしかったので、(博雅三位は)試しに、その人(の笛)と交換して吹いたところ、この世に他にないほどの(すばらしい)笛である。その後、引き続き(お互いに笛を吹き合うことが)数か月の間になったところ、お互い行って吹くけれど、(その人が)「もとの笛を返してもらおう」と言わなかったので、長い間交換したまま(交流が)終わってしまった。博雅三位が死んだ後、天皇が、この笛をお取り寄せになって、その時代の笛吹き達にお吹かせなさったけれど、その音(=博雅三位が吹いたような音)を表現できる人はいなかった。


細かい訳はしにくいところが多く、道コンレベルの古文からすると難易度高めだと思います。ただ、大意が取れないかというと、そこまで難しくはない。去年の古文の凶暴さに比べればだいぶ大人しくなったのかな、という感想です。


問題は、大意を取れた人にとっては秒殺です。

いかに北海道公立入試が「古文の読み」にこだわっているかが去年、今年と如実に表れているように思います。

今年の道コンでしか古文の練習をしていないようだとちょっと厳しいかもしれないですね。


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