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2021年共通テスト第2日程国語レビュー ③古文

現代語訳

出典:「山路の露」(平安~鎌倉?、「源氏物語」の続編)

訳は基本的に直訳ベースで、意訳せずに訳せるところはできるだけ意訳せずに訳しています。

また、訳の正確性は一切保証しません。この訳を引用、利用したことによる損害には一切責任を負いません。


1段落

夕霧がたちこめていて、道はとてもたどたどしいけれども、(女君への)深い心を道標にして、急いで向こうに渡りなさるのも、一方では不思議であり(どうしてここまでするのかが?)、今となっては(もう女君が出家してしまったので?)意味があるはずないことだとお思いになるけれど、以前男女の仲だったころの夢のような物語を、せめて語るだけでも語り合いたいと、行く先までつい急いでしまうお心持ちである。浮雲を吹き払う四方の嵐の中、月が残すところなく澄み渡った状態で上っていて、遠くまで(=女君のいるところまで)思いを届けようという気持ちが自然と出てくるので、物思いをし尽くさないことはないだろうよ(=女君に対してあらゆる物思いをする)。山が深くなるにつれ、道はとてもわずわらしくなり、露が深いので、随身はとても目立たないように姿を変えていたけれど、かえって雰囲気に似つかわしく、先払いが露を振り払う姿も趣深く見える。


2段落

そこ(=女君の居場所)は山のふもとにある、とても小ぢんまりとした場所であった。まず女君の弟を中に入れて様子をうかがわせてみると、

弟「こちらの門があるところは鍵をかけているようです。竹の垣根を渡してあるところに、通れる道があるようです。ただお入りなさい。人影もありません」

と申し上げると、

男君「しばらく静かに」

とおっしゃって、自分ひとりで入りなさる。


3段落

小柴というものを、一時的に設置しているのも、同じことではあるけれど(何と?)、とても親しみ深く、風情がある様子である。妻戸も開いていて、まだ人が起きているのだろうか、と思って見てみると、生い茂っている前栽の下から伝い寄って、。軒に近い常盤木が所せましと広がっているその下に立って隠れて見なさったところ、ここは仏の御前の部屋であるにちがいない。お香がとても染み渡るぐらい深く香りが出ていて、ただこの部屋の端の方で勤行をする人がいるのだろうか、お経が巻き返される音もこっそりと親しみ深く聞こえていて、しみじみと趣深いので、なんとなく、ただ涙が出てくる気持ちがして、じっくりと見入りなさっていると、しばらくして、勤行が終わったのだろうか、

女君「すばらしい月の光だなあ」

とひとりごとを言って、簾の端を少し持ち上げながら、月面をじっくりとながめて物思いにふけっている横顔を(男君は見て)、昔のままの面影がふと自然と思い出されてきて、とても感慨深くて、様子を見てみなさると、月が残すところなく光が差し込んでいるところに、鈍色と香染色の出家者の服だろうか、袖口が親しみ深く見えて、額の上の髪がゆらゆらと削がれて掛かっている目の周りは、とても優美で趣深く、このような状態(=出家者の服装、様子)でこそかわいさがより増してきて、(男君は)耐えがたい気持ちで見つめていなさっているところに、(女君は)それでもやはりしばらく物思いにふけりつづけて、

女君「里を区別しない、雲の上の(=「宮中にいたころと同じ」という意味も含む?)月の光だけが、かつて見た俗世のころの秋と何も変わっていないのだろうか(=月の光以外は、まるで変ってしまった)

と、こっそりとひとりごとを言って涙ぐんでいる様子はとても趣があるので、生真面目な男君もそれは心静めていらっしゃることはできなかったのであろうか、

男君「昔いた場所の月は涙で暗くなり、あの時そのままの光はもう見えなくなってしまった」

と言って、さっと近寄りなさると、(女君は)まったく予想外で、化け物などというものだろうと、気味が悪くて、奥に引き入りなさろうとする袖を(男君は)引き寄せなさるとすぐに、こらえることができない(男君の)ご様子を、(女君は)それでもやはり、自分だと見知られてしまったのは、とても恥ずかしく残念なことに感じながら、ひたすら不気味な化け物だったらどうしよう(=しかたない?)、この世にいるものだと(男君に)聞かれ申し上げてしまったことはつらいことだと思いつつ、どうにかしてこの世にはもういないのだと聞き直していただきたいと、あれこれと願っていたが、言い逃れできないほどにはっきりと見られてしまったと、どうしようもなくて、涙ばかりが流れ出ている、自分を見失ってしまった女君の様子は、とても趣深い(かわいそうな?)ものである。


読解上のポイント

・1行目「かつはあやしく」……出家した女君を、山里まで必死に追いかけていこうとする男君の執念を、自分自身で「なぜここまでの熱意が出るのだろう?」と不思議に思っている、という意味か。


・1~2行目「今はそのかひあるまじき」……出家してしまった女を追いかけていても時すでに遅し、もうどうしようもない、という意味か。


・2行目「ありし世」……「世」は「俗世間」と取っても意味が通るし、また「恋愛関係、男女関係」と訳すのも意味が通る。


・10行目「同じことなれど」……何と何が同じ? 女君の住み家と「一般的な住居」と同じと取るのが最も自然だろうか。同じ「小柴」が渡してあるけれど、女君の家は特別親しみ深く感じるという解釈で。


・15~16行目で、女君であることを男君が確信していることがわかる。


・19行目「なほ、とばかりながめ入りて」……「なお=それでも、相変わらず」という基本単語。ここから、さっきも「ながめ入りて」いた女君が主語であることは間違いないと判断できる。


・20行目「雲居」は純粋に「雲の上の月」という意味と、「宮中にいた当時の自分」がダブルミーニングになっているのか。「月だけが、昔と変わっていない」ということは、それと対比的に「自分や、自分を取り巻く状況はすべて変わってしまった」ということ。


・22~ラスト……女君は、いつの時点で男君の正体を確信したのだろうか。

22行目では「化け物などといふらむものにこそ、むくつけくて」と言っている以上、まだこの人影の正体に気づいてはいなさそう。

ただ、25行目の「世にあるものと~」の部分では、明らかに「男君に居場所、存在を知られてしまったショック」を語っているので、この時点では正体に気づいている。

だとすると、25行目の「いかがはせむ」は「化け物だったらどうしよう」と訳すのではなく「化け物だったら仕方ない」と訳したほうが適切だろう。「化け物だったら仕方ないが(あきらめもつくが)、男君だけには知られたくなかった」という意味にできるので。


問題の解答

問1 (イ)は「はかなく=一時的、かりそめに」、「~なす=ことさらに、人為的に~する」という意味。そして「小柴」という家のしつらえが主体なのだから、③としか取ることはできない。


問2 大意を取れていないと①で間違えやすいはず。

「前世からの縁」は、つまり「ありし世」の意味をどう取るか、という問題。

「男君と女君は過去恋愛関係にあり、それがもつれて女君が出家して、男君は女君を諦められていない」

というリード文からの情報をもとに解釈すれば、この「ありし世」は「以前の男女関係」「女君が出家する前の世界」と捉えるべきであることがわかる。

②「だに」の「最小限の希望」用法を知っていれば答えは出せたはず。

③は「合はす」がひとつの他動詞なので使役の助動詞ではない。「事情を説明させようとしている」もストーリーに合わない。

④「るる」は明らかに自発。

⑤「なむ」は文末が連体形なので「侍らめ=已然形」にはならない。「侍らめ」にしたいなら係助詞は「こそ」。

③~⑤は迷う要素がないと思う。


問3 ①の判断が難しい。

「ご随身いとやつしたれどさすがにつきづきしく、御先駆の露はらふ様もをかしく見ゆ」

なので、雰囲気に合うと言っているのは「目立たないように変えた地味な姿」であって、露を払う姿を「つきづきし」とは言っていない。それに「目立たないように変えた地味な姿」を「優美」と表現するのもおかしい。

②「余計な口出しをするのを不快に思い」が不適。

③「なつかし」の意味を誤訳している。

④男君が女君に出家してほしくなかったのは明らかなので、仏教への敬虔さに感動しているわけではない。


問4 これも問3と同様①の判断が難しいだろう。というか、この文章の23行目~ラスト全体が解釈しにくいので……。

最初は化け物だと思っていたが、すぐに男君の正体に気づいていることを25~26行目で読み取ることができたかどうか。


問5 大意さえ取れていれば比較的容易な問題。

① 「山道を行くことをためらっていた」が真逆。

② 男君が山里まで来ることを女君は予想はしていない。

④ つらい過去を忘れられていない。むしろ、月を見て「以前と変わってしまった自分や状況」をはかなんでいるので、状況が許すならば都に戻りたいぐらいの心境ではないだろうか。

⑥ 男君を「独りよがり」と批判的に描写している箇所はない。


問2~5までが、それぞれ引っかかりやすい選択肢が用意されていて、第1日程よりやや満点は取りにくそうな感じはします。大意を取るのはさほど難しくないのですが、細かい選択肢の消去をしていかなければならないので。

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