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2021年共通テスト第1日程国語レビュー①評論

最終更新: 6月24日

「やさしい中学国語」改訂版発売決定!

本題に入る前に宣伝です。

「新課程対応版」ということで「やさしい中学」シリーズが英語、数学ともに全面改訂ということになりました。

拙著「やさしい中学国語」では、前回諸事情により収録できなかった「古文の読解演習」が新たに収録される予定です。


あ、これも諸事情により「詩の読解演習」2題のうち1題が改訂版ではカットされます。

ということで、ぜひ両方お買い求めいただければ……。

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2021共通テスト国語レビュー第1弾

これまでの「国語テストレビュー」シリーズは高校受験モノしかやってきませんでしたが、今回からついに大学入試にも手を出してしまいます。

ということで、先日行われた、第1回共通テストについてコメントをつけていきます。


共通テストについては、すでに各予備校の講評、あるいはいろんな先生がコメントしているのを見ておられると思います。

全体的に「若干選択肢が短くなったセンター」という趣の問題が多く、「共通テストらしい新機軸」を感じる問題はないわけではないですがそこまでは目立たず、いわゆる「置きにいった」試験形式だな、というのは多くの方が感じているところでしょう。


わたしが当塾あるいは代ゼミの授業で「共通テスト」への勉強方針として言っていたことは、以下の2つです。


① モデル問題と試行試験から判断するに

・韻文の出題(詩・短歌+その解説文)

・複数テキストの比較問題

この2つのうち、どちらかを取り入れてくる可能性はそれなりに高い。

どちらが出てもビビらずにできる方針の確立と、その訓練は必要。


② 一方で「記述式」導入の前提が崩れ、試験時間、形式ともに従来のセンター同様に戻ってしまった。

であれば、問題形式・難易度ともに「ほとんどセンター」みたいな問題が出てくる可能性もある。「予想問題」ばかりやるのではなく、センター過去問も十分にやっておくべき。


まぁ要するに「どっちに転んでも大丈夫」なように保険を掛けた指導をしていたわけですが、その意味では②の方針が正解だった、という感じです。

結果論と言えば結果論ですが、何が出るかわからない状況下、われわれ受験指導者が取るべき指導戦略はこれしかなかったかと思います。


次年度以降方針がガラッと変わるとも思えないので、今後に向けての勉強戦略も今述べた方針で基本的には良いと思います。

あとは追試ですね。

追試も今回の本試と同様のスタイルで来るのか、それともいわゆる「共通テスト新機軸」が強く打ち出された問題が出てくるのか。

それを踏まえて最終的な次年度指導方針、勉強方針を決定していくことになるでしょう。


大問1(評論)

2017年北海道大学の2次試験で出題された「江戸の妖怪革命」がなんと共通テスト第1回目で登場しました。

切り取られた箇所こそ違うものの、特に今回の後半13段落以降の論旨は北大で出された文章とほぼ同じなので、北大受験生で過去問やっていた人にとってはわりと有利だったかと思います。

当塾でも思いっきりテキストとして採用していましたので、よかったですね。


ただ、文章の内容を一度やっているからと言って必ずしも有利になるかと言うと、そうも言いきれない面もあるのですが……。

わかった気になって先入観たっぷりで読んでしまうよりは、虚心坦懐にフラットに読めたほうが点数良かった、みたいなこともありえますからね。


文章の趣旨、各段落ごとに捉えなければならないポイントは次のような流れです。

今年の受験生は今さら細かく振り返る余裕はないかもしれませんが、高2以下の人で今回解いてみた、という人は照合してみてください。


(1段落)

・「フィクションとしての妖怪」ということは、「リアルな妖怪」もいるということ?

→対比関係の提示

・「リアル」から「フィクション」が生まれたのには「歴史的背景」がある


(2段落)

・「古典的な妖怪」と「フィクションとしての妖怪」の対比

・「古典的」は近世前期、「フィクション」は近世後期


(3~4段落)

・「古典的妖怪」の定義=「日常的理解を超えた不可思議な現実に出会ってしまったとき、その理不尽な現実に意味を与えるためのもの」である。

よって、1段落で予想したとおり「現実から生まれた、リアリティある存在」になる。

理不尽な現実から生まれたものである以上、「楽しむための存在」にはなり得ない。


(5段落)

問題提起。では、なぜ「楽しむためのフィクション」となったのか。


(6段落)

「アルケオロジー」概念の導入。あくまでも「妖怪」の話を読み解くための道具として「アルケオロジー」概念が持ち込まれたわけで、5段落までの妖怪の話を忘れないように注意。


(7段落)

「アルケオロジー」の定義。一般的な「考古学」とは違うことに注意。

「思考や認識を可能にしている知の枠組みがどのように変化したか」を明らかにすること。

✕「客観的事物が先にあり、認識は後から生まれる」

◎「先に認識をもたらす枠組みがあり、後から事物を認識する」

この✕―◎関係は非常によく出る論旨で、現代文に慣れている生徒はもう何回も何十回も見たド定番の話だと思います。この✕―◎関係を見て「あぁ、またこの話ね」と思えない生徒は練習不足と言っていいでしょう。


(8~10段落)

その「枠組み」というのは「物、言葉、記号、人間の関係性」によって作られている。


(11段落)

ここから「妖怪」の話に戻る。

4段落までの内容が頭に入っている人とそうでない人で決定的な差がここから開いていきます。今回ボロボロだった人は、4段落までの内容をもう一度強く認識したうえで読み直してみるべき。

ここは「古典的妖怪」の説明。

「古典的妖怪」は「神霊からの警告、言葉を伝えるための記号」であること。

プラス「所与のもの(=他者から与えられ、自分では変えることのできないもの)」であること。この2点の内容がつかめればいいでしょう。


(12段落)

ここから「フィクションとしての妖怪」の説明。

「神霊からの警告、言葉=記号」ではなくなり、ただの「物」になった。


(13~14段落)

なぜそのような変化が起こったか、という理由の説明。

「神霊(=自然)が、人間の支配力が上がったことで、コントロール可能な存在に変化したから」。

そして「コントロール可能な存在」な記号を、ここでは「表象」と呼ぶ。


(15~18段落)

最後の最後で

① 近世前期の「神霊からの警告としての妖怪」

② 近世後期の「フィクションとしての妖怪」

に続いて

③ 近代の「人間の不気味さから生まれる妖怪」

という新たな対比関係が導入される。問5は、要するにこの③が読み取れたかどうかを問う問題。


問1

なぜか選択肢5つから4つに減らされた漢字の問題。

正直、評論で語句の意味を問うスタイルのほうがいいと思うんですけどね。

アの「民俗」は、なぜ「族」を選択肢に入れなかったのでしょうね。


問2

3~4段落「古典的妖怪=近世前期の妖怪」の定義を問う問題。

②「フィクションの領域」とあるのは「近世後期」の説明。

③「不安を認識させる」のはではなく「不安を和らげる」ための存在がここで言う妖怪。

④「日常的な因果関係にもとづく」が全く逆。

⑤これも③と同様「危機を生み出す」のではなく、「危機を解消、和らげる」ためのもの。

これは紛らわしいな、という選択肢はなく、「読めていれば解ける」問題です。


問3

7段落「アルケオロジー」の定義を問う問題。

①ここで言う「アルケオロジー」はあくまで「アルケオロジー的方法」ということであって、本物の考古学のことを言っているわけではないのです。

紛らわしいのは③でしょう。

本文で言っているのは、各文化事象ごとに、それが「物、言葉、記号、人間」という4要素がどのように組み合わせられて作られているかを分析する、という話です。

③の言い方だと、各文化事象を「物、言葉、記号、人間」どれか1つに所属させてしまう、という意味になるので、言っていることが全然違うことになります。

④「同じ認識の平面上でとらえる『ことで』」と言うと、それが「手段」であるかのような言い方になってしまう。「同じ認識の平面上でとらえること」が「目的」で、そのための手段がアルケオロジー。

⑤「世界史的変動」がおかしい。日本の話しかしていない。


問4

13~14段落「表象」の定義を問う問題。

定義だらけですね、今回のテスト。

拙著「高校現代文をひとつひとつわかりやすく」の中で思いっきり「定義をとらえることの重要性」を力説していますが、さすがFiveSchools代表、先見の明があります。

①「人間を戒める」などとはどこにも言っていない。

③「実在するかのように感じられる=リアル」なんだから、これは「古典的妖怪」のほう。今は「フィクションとしての妖怪」の話をしている。これを選んだ人は、もう頭の中で対比関係グチャグチャになってしまったのでしょうね。

④「~きっかけになった」が因果関係逆。「人間の力があらゆるものに及ぶようになったことによって、妖怪も人間にコントロールされる存在になった」のです。

⑤「人間の性質」が妖怪になるのは近代の話。今はまだ近世後期の話をしているので、フライング。


問5

(1&2)本文さえ読めていれば高校入試レベルの問題かと思います。それほど文章読めていなくても(1)は段落番号と段落内の語句を対応させるだけでも答え出てしまいますよね。(2)も直前の「人間によって作り出された」「近代に入ると」さえチェックすれば終わり。そういう意味でも、まさに「高校受験的」な問題だな、と思います。

いわゆる「共通テストらしさ」と言われるものって、いわばすごく「高校入試的」なものなんですよね。


(3)ある意味「複数テキスト」問題ということで、共通テストらしさ、新機軸が見える問題といえばこの(3)でしょう。


・ここで言う「ドッペルゲンガー」が本文でいう「妖怪」に該当することをつかむ。

・芥川の引用文中「仕合せにも」から、ドッペルを自分で見なかったことで安心している、という心情をつかむ。

・「死は僕よりも第二の僕に来る」という内容をつかむ。

・本文中の「近代的妖怪=不気味な自己」という内容をおさえている。


以上4条件と照合すると②であることは導けるかと思います。

ただ、結局この(3)で付加された文章を通じて何が言いたいのか。

本文全体との関連性が強いとは言えず、すっきりしない問題、もっと言ってしまえば必然性の薄い取って付けた印象がぬぐえない問題かなぁとは思ってしまいますね。

「各予備校が作った苦し紛れの予想問題」を解いたときによく受ける印象を、本番の試験で感じてしまいました。


ということで、以上第1問評論については終了です。

すでに今の時点で4000字オーバーしてしまったこともあり、ちょっとこれは一回で全4問やるのは無理がありました。

ということで、共通テストレビューについては数回に分けてお送りしようと思いますので、来週のブログで小説について書こうと思います。

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