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2020年北海道公立高校入試国語レビュー

画像はぜんぜん本題とは関係ありませんが、こないだあまりに寒すぎて勢いで買ったコートです。いいでしょう。


本日は2020年12月25日、予定より2日遅れのブログ更新となり失礼しました。

さて、恒例の「国語テストレビュー」シリーズについて、そういえば本物の公立高校入試についてはまだ一回もやっていなかったことに思い至りました。


というのも、この「国語テストレビュー」を本格的にシリーズ化させたのがわりと最近で、3月の入試の時点ではレビューを書こうという発想がそもそもなかったのですよね。


ただ、今から入試を迎えるにあたって、おそらく受験生の皆さんが最も聞きたいのはやはり「本物の、最新の入試過去問」の分析ではなかろうかと思います。


ということで、今週はクリスマス記念スペシャル、北海道公立高校入試国語2020年について、実際にどのような問題が出たのか、それを村上はどのように見ているのか、記事にしてまとめてみたいと思います。

受験生の人にとっては完全にネタバレですので、過去問集を買うなりして、問題を自分の力で解いて丸付けまでやってからこの記事を読むことを強くおすすめします。


2019年入試とかもそのうち書こうかな、と思いますし、場合によっては私立入試もやってもいいかもしれないな、とも思ったり。


大問1(標準問題)

問1 「簡便」の読みが正答率6割を切る。「かんびん」って読んでしまうのでしょうね。カンベンしてくださ(以下略


問2 「巻末」の正答率が3割ちょい、「列挙」の正答率が1割ちょい(!)。

あくまでも標準問題なので、裁量問題を受ける生徒はもちろん除外された数値ですが、それにしても1割ちょいとはなかなか衝撃的な数字。


問3 「胸を借りる」「胸のつかえがおりる」の「胸」を問う問題。正答率2割弱。これは「胸」という言葉がわからなかったのか、それとも「胸」が漢字で書けなかったのか。


問4(2)

「段ボールは、現代の大森林」である、という比喩の意味説明を問う問題です。

比喩というのは、とにもかくにも「共通性」を見つけ出すことが最優先。

つまり「現代の都市における段ボールの状況」と「大森林」に、どのような共通性があるのか、ということを考える。

すると「どちらも、段ボールの原料になる」という共通性があることに気づくことができます。


誤答として最もありがちなのは

「段ボールのリサイクルシステムができがっているから」

でしょう。

直前に接続詞「すなわち」があるのが罠で、先ほど言った「共通性」を考えないで解くと多くの生徒がここに引っかかってしまうはず。


傍線説明の記述問題に強くなりたいなら、必ず「傍線それ自体の意味」を考えてから書く習慣をつけないといけないのです。

逆に自分が何か答えを書いたら、それが「本当に傍線部の意味を説明できているのか?」と自問することが不可欠。

「なぜ、段ボールのことを『現代の大森林』と呼ぶのか?」

答え「段ボールのリサイクルシステムができがっているから」だと、何がどう「大森林」なのか意味がまったくわからない。

だったら、それは正答には絶対になりえないんだ、ということです。


たいへん良い問題だと思いますが、標準問題を解く層にとってはかなり厳しいのも事実だと思います。裁量問題で出してもそんなに正答率高くはならない問題でしょうね。


大問2(漢字、語句、資料)

問1 和語、漢語、外来語という比較的レアなジャンルのわりには正答率8割弱と健闘しています。今回は「削り」に送り仮名がついているから容易だったのでしょう。

漢語と和語の区別は送り仮名の有無だけではないので、「音読み=漢語」「訓読み=和語」で見分ける基本的な方法も知っておいてください。


その他の問題は特にコメントするようなことはないです。

いつもどおり、問題文、空欄前後から「条件」をつかみ、その条件に違反しないように、かつ日本語として破綻がないように答えを作るだけです。


大問3(小説)

「中高生が、職人の師匠に弟子入りする」ってストーリーはなんでこんなに入試によく出るのでしょうね。

拙著「やさしい中学国語」に収録した話も、まぁ弟子入りとはちょっと違うけど同じようなストーリーですし。


心情の流れとしては、

初めて本の修復をするプレッシャー

→師匠の手際のよさに感動

→我に返る

→真似をしてみろ、と言われてさらにプレッシャー

→師匠が『失敗しても、後でリカバーすればOK』と伝える

→プレッシャーが軽減、師匠の気遣いがうれしい

→成功して興奮、成長


こんな感じです。

心情の流れを全体でとらえることと、心情の細かな記述を正確につかむこと。

小説なんて結局この2つができるかどうかです。


問1 空欄前後の内容と本文の照合さえできれば、特に間違いようのないイージーな問題。


問2 正答率10%を切る問題なので、正答率だけを見れば難問ですが、上位校受験生にとっては何ということもない問題です。

学テABCもそうですが、北海道の高校入試は問題文の指示を複雑にすることで正答率を下げようという傾向が強いです。


今回の問題は

・主人公への「気遣い」となる内容であること

・「自分の師匠の話」をした後に来る内容であること

・「失敗」にする考え方、あること

この3つの要件が問題文中に指示されています。

この問題が難しい、解けないと思った人は、この3つの要件に自分の答えが当てはまるかどうかをチェックすること。


問4 これも、今何が問われているかを問題文から正確におさえないと、つまらないミスを招きます。

傍線部はラストシーン、すでに主人公がプレッシャーから解放され、職人として成長をとげた後の部分です。

にもかかわらず、問われているのは「最初、何を恐れていたのか?」という冒頭の内容なのです。

正直、この問題を問うことに何の意味があるのかはわかりませんが……

でも国語の試験というのはそういうものです。

「問われていることに答える」

世の中には「問題の解き方」を教えたがる、語りがたる、知りたがる人で満ち溢れていますが、問題の解き方などというのは要するにこれに尽きるのです。


大問4(古文)

2020年入試国語で、なんといっても白眉はこの古文でしょう。

あまりにも良い問題で、速攻でFiveSchoolsレギュラーテキストの仲間入りを果たすことになりましたので、当塾で国語を受けている生徒はすでに教室で全部説明をしております。


まずこの問題の何が目を引いたかというと、「長歌」という形式ですよね。

「短歌」ですら滅多に出ないのに、長歌、しかも現代文ではなくて古文で。

このレア形式の出題に気圧されてしまった受験生が数多くいたことは想像に難くない。

正答率も問1「枕詞」だけ唯一5割を超えていますが、あとは軒並み4割を切り、最難問の問3①については1割を切るという悲惨な正答率になっています。


ただ、正答率はともかくとして、よく練られた良問であることは間違いなく、この問題を「難しすぎる」と言って切り捨ててしまうのは非常にもったいないです。

そのへんの学習塾だとちゃんとこの問題を教えられる指導者も少ないはずです。これを誤魔化さずにちゃんと解説できるかどうかで先生の力量を測ることもできると思いますよ。


問1 枕詞「たらちねの」は常識といえば常識ですが、「たらちねの」が先頭に来ていないところがいやらしい問題です。

「枕詞なのに先頭に来なくていいのだろうか?」と深読みしてしまい、「誰ぞこの」を答えてしまった生徒が多かったために正答率が大幅に下がったものと思われます。いいんです、先頭に来なくても。


問2 誤答でよくあるのはおそらく「山」だろうと思います。

この問題で、なぜ答えが「山」ではなくて「葉」なのかを考えるには、単に傍線部前後の情報を見るだけでダメで、文全体の構造を、それこそリード文から見なければいけない。

この長歌は「春と秋では、どっちが趣があるか?」という質問に対する回答であることを念頭に置いて読まねばなりません。つまり、リード文をしっかり読めているかどうかで、もう勝負がついてしまっているのです。


つまり、この長歌は前半部分「冬ごもり~」からが「春」について話をしている。

よって、真ん中の「秋山の~」からが「秋」について、春と比較をしながら話をしている、という前半・後半の2部構成になっていることを見抜かねばならない。


となると、今問われている傍線部「青きをば」は後半戦「秋」の説明ですから、答えを「山」にしてしまうと、季節に合わないわけです。山が青々としていたら、それは秋ではなくて春か夏になりますよね。

「葉」であれば、「すでに色づいた黄葉と、まだ色づいていない青葉が両方落ちている」という状況だと解釈できますから、何の矛盾もなくなる、というわけです。


ね、小手先の読解だと太刀打ちできないけど、文章全体の構造をつかめば答えは「葉」しかないんですよ。本当に力がなければ解けない良問です。


答え「鳥」にした人もいるのかもしれませんが、まったく話に脈絡がなくなってしまいますし、後ろの「置きてそ嘆く」と合わないですよね。葉っぱは「置く」ことができますけど、「鳥」を置いたら逃げていきますわね。


問3も結局、前半=春、後半=秋の「対比」であることを前提に読まないと、到底答えが出せるはずがありません。


問3①は、前半「入りても取らず、取りても見ず」の部分が否定的内容になっていることに気づけたかどうか。

冒頭「鳥が来て鳴く」「花が咲く」ことを春の趣深さを示す肯定的内容で、その後に「だけれども」と言ってから、「手に取ることができない、じかに見ることができない」と春の難点、デメリットを述べているわけです。

だから、このデメリットを前提に読めば「黄葉も、青葉も、直接手に取って思いにふけることができる」という秋のメリットが浮かびあがってくる。

問2で「春vs秋」の対比に気づいていれば、問3①は十分答えられる問題のはず。


問3②は何が難しいかというと、直前の「嘆く」という言葉があることです。

「嘆く」は通常否定的な意味あいですから、「秋のほうが勝ち!」だと作者が述べているとは思えなかったのではないでしょうか。

しかし、やはり問2~問3①で見てきたように、春と秋の対比をもとに読んでいくと、やはり秋の勝ちであることは明白です。

「春は、鳥が鳴いて、花は咲くけど、手に取って見ることはできないじゃないか」

「それに比べ、秋は手にとって葉を鑑賞することができる」

この流れで、「春の勝ち」になるわけがない。


では、なぜ「秋山そ我は」の直前に「嘆く」という否定的なワードが使われているのでしょうか?

これは諸説あると思いますが、わたしなりの解釈をひとつ記しておきます。

今回のテーマは「趣深さ」なわけですから、肯定的、否定的いずれにせよ「心を動かされる」というのは、それだけで十分価値があることなわけです。

「彼女はたいへん悲しい音楽を演奏した」というのは、それだけ人の心を揺さぶる「良い」演奏ですよね。

「悲しい」という否定的なワードが書いてあっても、この場合の彼女の演奏は、肯定的に評価されるべきものです。悲しい曲を、悲しく演奏することはむしろ「良いこと」なのですね。

嬉しいことにせよ、悲しいことにせよ、季節によって心が動かされる、それを「趣」と呼ぶのであれば、「嘆き」というのはむしろ肯定的な内容と言っても、決して矛盾とは言えないでしょう。


大問5(裁量問題・評論)

「スキーマ」「ステレオタイプ」などという認知心理学用語も注釈なしで登場し(文章中で説明があるからでしょうが)、かつ対比関係が目まぐるしく移っていく(真・行・草の対比→複雑と単純の対比→アートとデザインの対比)ので、結局この文章が何を述べているのか? と問われると言葉に詰まる生徒が多いのではないかと思います。

裁量問題らしいな、という出典です。

こういう文章は、事後的にでもいいから要約をやると勉強になるんですけどね。


問1 案外「手帳」でやられた生徒が多かったがゆえの正答率6割でしょうか。


問2、問3はイージーではありますが、基本的な力を見るには素直で良い問題だと思います。


問4 正答率1割を切る難問、ということになっていますが、6点中3点はほとんどの上位校受験生は確保したものと思いますし、南北を受けるような生徒であれば、もっと言ってしまえばFiveSchools生にとってはごく標準的なレベルの記述問題だと思います。

というのも、傍線直前に接続語「だから」が書いてあって、そして問4はストレートに「理由」を問う問題なわけです。

ということは「直前の内容をまとめればOK」という発想は、ちょっと塾で国語を習ったことのある生徒なら皆が思いつくわけですね。

もうひとつのポイントである「アートは意味処理をさせない」という内容も、問題文の指示に「意味内容」という語を使え、という強力なヒントがありますから、それを利用すれば書くべき場所はここしかない。


これは道コンでもよくある構造なのですが、文章内容は読みごたえのある良い文章でも、設問が安易とうか、そこまで全体の内容を理解していなくても、いわゆる「入試テク」的にある程度得点できてしまう仕組みになっているんですよね。

だから北海道の高校生というのは、どうしても「文章全体をしっかり理解しよう」という動機付けが弱くなってしまうんです。これが、高校に入ってからかなり尾を引くことになるので……

なんで、もっと入試で「趣旨・要約」を問う問題を出さないのかな、とずっと不満に思っているのですが。


たとえ高校入試を解くのに直接的には必要がなかったとしても、上位大学に行きたいのであれば「文章全体で、結局何が言いたかったのか?」を、テストの後でもいいので要約する習慣をつけたほうが絶対にいいと思いますよ。


ということで、今回は以上となります。

今年の道コン、学テABCはぜんぶこんな感じで解説を書いていますので、中3の人は復習がてら見てみてもらえたら。

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