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  • 執筆者の写真FiveSchools

2020年学力テストB国語レビュー

更新日:2021年1月13日


さて学テAのように、物議を醸すような出題はあったのでしょうか。


物議1


物議2


大問1(小説)

異様に登場人物が多いわりには短い本文ですが、この文章の入試国語的に面白いところは


「主人公・宮田の視点から一貫して描かれているのに、『宮田』と三人称で書かれている」


ことでしょう。

その違和感を突いた問題が問3ですね。


問3

一見単なる指示語の問題に見えるものの、よくある「直前から答えを探す」方式で安直に解こうとすると失敗するよう設計されています。

波線部「こちら」が指す人物は主人公「宮田」なのですが、波線部「こちら」の直前には「奥沢」という人物が明記されていて、この文章が「宮田」の視点で描かれていることを意識できない生徒の多くが「奥沢」と答えて✕になったことでしょう。


「指示語の問題は、直前に明記されているものが正解とは限らない」

「小説読解では、誰の視点で物語が語られているか、が重要」


という、学テABCで問うにはなかなか高度な学びが得られる問題で、これはよく考えられた出題だと思います。


問4

「具体的に」という出題方法、本当に学テは好きですね。

入試では、文章のポイントを一般性を持たせた形で記述させることが多いですが、なぜか学テでは「具体例」をそのまま答えさせる問題が好んで出題されます。

前回の学テA、大問1の問5もそうでした。

ただ、今回は学テAとは違い字数が指定されての書き抜き問題だったこともあり、正解は容易だったかと思います。


問5

記述問題ですが、やはり学テ(これは北海道公立入試も同様)らしく問題文の指示が細かいです。

学テ、あるいは北海道公立高入試は、正直言って「本文を精緻に読めるかどうか」よりも、むしろ「問題の要求を正確にとらえられるかどうか」によって大きく得点が左右されます。


今回で言えば「①誰の」「②どのような様子に対して」「③どのように思っているか」という3点が要求されているわけですから、この①~③の解答になる情報を本文から拾えばそれで終わりです。

北海道公立高入試の国語で確実に点が取りたいと思うなら、

「問題文を読む」

「そこから答えるべきことが何かを分析する」

ことを過去問を通じて徹底演習することです。何よりも必要な訓練はそれです。


……ちなみに、前回物議を醸した漢字読み取りの問題、今回は特に問題が起こりそうにはないですね。


大問2(詩と随筆)

公立入試から韻文が排除されて久しいですが、学テは相変わらず頑なに詩を出し続けますね。

ただ「大学入試共通テスト」のモデル問題、試行試験で短歌、詩が立て続けに出題されている現状もあり、高校入試を通じて韻文に触れる機会を保つのはわたしは良いことだと思うんですよね。

むしろ、公立入試が100点満点化されるにあたり、韻文の出題を復活するのもアリじゃないか、とさえ思っていたりします。


「生命保険は、生と死が裏腹の関係にあることを強制的に承認させる仕組みだ」

中学生にはなかなかピンとこないであろう「大人の文章」ですね。

高校入試だからと言って、中高生の人間関係や成長を描く話ばかり出題するのはわたしは好きではなく、このような「中学生だけではどう考えても思いつかないであろう大人の発想、考え方」に気づかせるような出題が大好物です。

よって、ある程度精神的に成熟している生徒とそうでない生徒で、文章から受け取れる情報にかなり差が出たのではないかな、と思います。

そもそも「長女が生まれてすぐに生命保険のセールスマンがやってくる」というシチュエーションや意味合いじたいが中学生には具体的にイメージしにくそうな気もしますし。


ただ、消去法的に解けば、あまり意味がわかっていなくても点数は取れてしまうと思うんですよね……。

学テに限った話ではないですが、もう少し高校入試国語の世界も、消去法的テクニックでは答えを出せない、本文内容全体をきちんと汲み取れた人だけが解けるような出題の仕方を研究してほしいなぁ、と思ってしまいます。

大学入試現代文、特にセンターなんかはこのへんの作問能力がズバ抜けていますからね。


大問3(古文)

高校入試古文のジレンマなのですが、学校で教えられる古文単語、文法、知識があまりに薄っぺらいため、結局は「注釈だらけ」になってしまうんですよね。

古文を読めるかどうか、ではなく、いかに古文と注釈を対応させられるか、注釈を見落とさないか、というゲームになってしまい、結局何の勉強をしているのかよくわからない、という状態になってしまいがちです。

(その意味では、今年の公立高校入試はよく作ったものだと感心しました)


ちなみに、今回の学テBだとこんな感じ。



マーカー引いたところが注釈がある箇所です。


注釈の量もちょっと多すぎるかな、とは思うのですが、何よりも問2が古文を読まずとも直前の注釈内容だけで解けてしまうんですよね。

これはちょっと問題としてどうかな、と思ってしまいます。

問3以降は適切な出題と思います。


ちなみに問1ですけど、旧暦の月名って今の中学生授業で習う機会あるんですかね??

国語教科書のカリキュラムを見ても、あまりそういう機会が与えられているような気がしないのですが……(当塾では教えてます)


大問4(説明文)

まず、問2の出題は批判せざるを得ません。

筆順を試験で問う、筆順に○✕をつけるという発想、あまりにも前時代的だと思います。

そもそも筆順というものはあくまでも目安であり、そこに○✕をつける性質のものではありません。

文部省「筆順指導の手びき」の中でも


「筆順は、学習指導上の観点から、一つの文字については一つの形に統一されているが、このことは本書に掲げられた以外の筆順で、従来行われてきたものを誤りとするものではない」


と記載されていて、あくまで「指導上の目安」であることが明言されているわけです。


だから、小テストなど、生徒評価にかかわらないところで、指導の一環として筆順を問うことは別にいいと思うんですよ。

しかし、学テBという、進路指導上の重要な資料になると分かりきっている公的試験においてこのような問題を出すのはどう考えても不適切でしょう。

(入試で筆順を出す都道府県があることも知ってはいますが、当然これも不適切だと思います)


あと今回初めて知りましたが、この「筆順指導の手びき」って1958年に出されたものなんですね。

だったら前時代的どころの騒ぎではなく、その「前時代」でさえ筆順を固定的、規範的にとらえて〇✕をつけることは否定されていたわけです。


また、問4もちょっとアレですね。

50字記述で、傍線部直前の50字をただ抜き出すだけ、という低クオリティ出題。

「傍線部の前後を何も考えず抜き出すだけで点数がもらえる」という誤解を中学生に植え付ける出題はいい加減なくなってもらいたいものです。


大問3までは「なかなか質の高いテストだな」と思えただけに、この大問4は残念でした。


あ、あと問5。

やはり大問1・問4と同様「具体例的」に答えさせようとする出題なんですよね。

この学テの「具体例への執念」は何なのでしょうね。

他の都道府県の入試でもこういうスタイルの出題はあまり見たことがないのですが。


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